サブスク企業インタビュー  ー美容室定額サブスク「MEZON」は、なぜ国内No.1になれた?

美容室

突然ですが、あなたの会社ではサブスクリプション(以下、サブスク)を取り入れていますか?


最近何かと話題のサブスク。一度決済登録をするとその後は毎月自動的に更新されるため、会社にも、お客様にもメリットがたくさん。しかし、一度は導入を検討してみたものの、「運用が難しい……」と諦めてしまった方もいるかもしれません。

この企画では、サブスクの特徴をうまく活用し事業を成長させている企業にお話を伺い、サブスク活用のヒントを探ります。第二回目となる今回は、店舗型美容サブスクリプションサービスとして国内No.1の実績を誇る「MEZON」を運営する、株式会社Jocyの石黒さんにお話を伺います。

💡こんな企業様・個人オーナー様におすすめ

  • サブスクの成功事例を知りたい
  • お客様の生活の一部としてサブスクサービスを普及したい
  • より長くサブスクサービスを利用してもらえるコツを知りたい

株式会社Jocy 石黒さん

■ 代表の実体験がサービス立ち上げのきっかけに

ーーまずは、MEZONについて教えてください。

石黒さん:「プロに任せる新習慣」として、美容室の定額サブスクを展開しています。月額5,830円から、現在1,200店舗以上の美容室どこでも通えるんですよ。また、カットやカラーよりも、ヘッドスパやトリートメントといった“メンテナンス”メニューが中心なのも特徴ですね。

2018年にサービスをスタートしてから5年。現在は4万5千人以上の会員様に登録いただいており、店舗型美容サブスクリプションサービスとしては国内No.1となっています。

伸び続けている利用者、提携美容室の推移

‎MEZONメゾン/美容室定額(サブスク)サービス

ーーどのようにユーザーを広げて行ったのでしょうか。

石黒さん:実は、ユーザーに向けの広告はほとんど出稿したことがないんですよ。これまでトータルで10万円も使っていないんじゃないかな。

ーーえ!?ではどうやって国内No1のサービスに成長したのですか。

石黒さん:「サブスク」「トリートメント」などキーワードで検索したときに上位にあがるようにSEO対策をして、オーガニックでの流入を増やすことに注力していました。「髪の毛を綺麗にしたいけど、サブスクという方法は知らない」顕在層に向けては、メディアに取り上げていただくことでアプローチしたりも。

ありがたいことに、既存のユーザーが「良いサブスクがあるよ」と周囲の方におすすめしている、という話もよく伺っています。また、面白いことにテレビでサブスクの特集が流れると、MEZONの検索数も一気に跳ね上がるんですよ。MEZONは出ていないのに(笑)。

世の中が「サブスク」で話題になるのと同時に比例してあがっていくMEZONの認知

世の中が「サブスク」で話題になるのと同時に比例してあがっていくMEZONの認知

ーー純粋にサービスの内容が良いから、広告費をかけずともここまで広がったのですね。MEZONはどんなきっかけで生まれたのでしょうか?

石黒さん:代表・鈴木の体験がきっかけです。MEZONを立ち上げる前、鈴木は広告代理店でクライアントに向けた広告の企画・開発を行っていました。仕事柄忙しい時期は本当に忙しく、夜中まで企画書を考えることもしばしばあったとか。

とはいえ、髪も洗わずに提案に伺うのは気が引ける。だから、クライアントのオフィス近くの美容室でヘッドスパを受けてから提案に向かっていたそうなんですよ。そうすると気分がリフレッシュするだけでなく、気合の入り方も全然違う。実際、提案前に美容室に行ったときと行かなかったときで、提案の通過率も全然違ったらしいんですよね。

そこから「忙しい人ほど、美容室のサブスクの需要があるんじゃないか?」とMEZONの構想に至りました。

■成功のヒントは、業界を“巻き込んだ”こと

ーーその体験をサービスに落とし込むのに、具体的にはどのようなことを行ったのでしょうか。

石黒さん:最初は工数がないので、少人数の運営でユーザーからも、美容室からも声がかかるにはどうしたらいいかを考えていました。その結果作ったのが、サービスリリース前のティザーサイト。誰もが知っているような人気美容室と提携していることを発表して事前キャンペーンの告知をし、リリース前から話題になるような仕掛けを作りました。

ティザーサイトのアクセス数もすごかったし、いろんなメディアに取り上げられたり、Yahooニュースに掲載されたりと反響は想像以上でしたね。

当時のリリース前に行われた事前キャンペーン

ーーなるほど。ただ、リリース前のサービスで人気美容室に協力いただくのは、かなり大変だったのではないでしょうか・・・?もともとコネクションがあったのですか?

石黒さん:完全に1から関係を作っていきました。単に営業をかけたのではなく、巻き込んでいく形で関係を作っていったのが良かったのかもしれません。

ーー巻き込むとは?

石黒さん:代表の鈴木も僕も、もともとは代理店出身で美容業界のことはほとんど知りません。だからまずは、「美容業界を良くするためのサービスを作りたいから、美容業界のことを教えてくれませんか」とトップ経営者の方々にアポイントをとったんです。そこで、サービスの構想にFBをいただいたり、どんなサービスだと使いたいかアンケートを取らせていただいたりしていました。

ーーサービスの構築段階から、美容室と一緒に検証を行っていたのですね。

石黒さん:そうなんです。実際に美容室からいただいたFBをもとにできたのがMEZONです!いざサービスリリースができる段階になったとき、協力いただいた方々に「よかったら掲載しませんか」と声をかけたら、「自分たちが一緒に作ったも同然だから」と協力していただけることが多かったですね。

僕らはあくまで構想しただけ。具体的なサービス内容は、実際に美容業界の方々が求めるものを落とし込んでいったことが、多くの方に使っていただいている理由のひとつだと思います。

現在導入中のサロンを一部抜粋

ーー美容業界のトップたちと協力して作ったMEZON。しかし、実際に利用するのは現場で働くスタッフがメインですよね。

石黒さん:おっしゃるとおり、お問い合わせをいただくのはほぼスタッフの方からですね。リリース後は、そういった現場のお声を元にサービスの改善も進めています。

どんなお問い合わせが多いかを定量的にチェックして開発に活かしたり、スタッフの方とお話できそうなときには「どうしたらもっと使いやすくなりそうですか?」と直接意見を伺ったりすることもあります。

また、僕も鈴木もプライベートでMEZONを利用しているので、美容室に行ったときに「実はMEZONの運営メンバーなんです」と、困っていることや要望などを直接お伺いすることもありますね。

ーーいろんな角度から、美容室からの声を取り入れているんですね。では、ユーザーの声はどのように取り入れているのでしょうか。

石黒さん:お問い合わせのほか、SNSでの口コミもこまめにチェックしています。美容院側の声も、ユーザー側の声も、ほぼ毎日目を通していますね。気になった点はすぐに開発チームに共有し、早急にサービスに反映させる体制も整えているんです。

ユーザー側・美容師側それぞれの声を常に広い、使いさすさを追求しているアプリ画面

ユーザー側・美容師側それぞれの声を常に広い、使いさすさを追求しているアプリ画面

■美容室が抱えている課題の根本を考える

ーー実際使う方々の要望をしっかり取り入れているからこそ、MEZONは急成長したのですね。他にも継続利用いただくための秘訣はあるのでしょうか?

石黒さん:そもそも、MEZONは長期利用していただく構想で作っているんですよ。そのために、表面上ではなく、真の課題を掴んで解決する仕組みにしています。

ーー課題というのは?

石黒さん:美容室って、平日と土日の忙しさのギャップがすごいんです。特に女性の場合はカラーしてカットしてトリートメントして……となると、3時間は時間がかかりますよね。そうすると、平日の会社終わりに行くのは難しいから、どうしても土日に集中してしまいます。

平日の利用率をあげるために「平日割引クーポン」を出す美容室もありますが、それでは根本の課題解決にはなりません。クーポンが使える時期しか通わないお客さんも多いから、継続利用には繋がりづらいし、通常の価格より安くしているから収益も見込みづらい。

ーーなるほど……。では、その課題に対してMEZONではどんなアプローチを行っているのでしょうか。

石黒さん:僕たちのサービスでは、平日のスキマ時間にいけるようにしています。だから、カットやカラーよりも、トリートメントやヘッドスパといったメンテナンスメニューに注力しているんです。「トリートメントだけ」「ヘッドスパだけ」なら、30分〜1時間ですむ場合も多いですからね。

美容室としてはクーポンを使わないから単価を下げなくてもいいし、平日に集客が見込める。気に入ってくれたら、店販を購入いただいたり、今度は土日にカットやカラーをしにきてくれるかもしれません。

クーポンありきの集客ではできない、お客様・美容室双方にメリットのあるMEZONのサブスク集客

クーポンありきの集客ではできない、お客様・美容室双方にメリットのあるMEZONのサブスク集客

ーーメリットが多い!しかし、「行きつけ」の美容室しかいきたくない、という人も多い印象です。その場合、「いろんな美容室が使える」はデメリットに感じる場合もあるのでは……?

石黒さん:たしかにそういう方は人は多いですよね。でもよくよく話を聞いてみると、「“カットやカラー”は行きつけでしかお願いしたくない」という場合が多いんですよ。

先程、提案の前にはクライアントのオフィス近くの美容室に行っていた、と話した鈴木もそうです。ヘッドスパやトリートメントはどこでもいいけど、髪を切る場所は絶対にいつも同じ場所だっていうんですよね。この仮説を検証するために、街頭で何人かの方に声をかけて「僕たちが美容室代をすべて持つので、今からそこの美容室で髪を切ってきてくれませんか」とお願いしてみたのですが、ほぼ全員に「知らないところで切るのは嫌だ」と断られました(笑)。

だから、MEZONでは「どこでもお得にカットやカラーができますよ」という設計にはしていないんです。実は、この設計がコロナ禍でも功を奏したんですよ。

ーー特にコロナが流行り始めた頃は、美容室に行くお客さんが急激に減って、美容業界も大打撃を受けたと聞いています。

石黒さん:実際、どこの美容室も大変だったと思います。でも、MEZONを導入していた店舗では、近所の方が平日に来店してくれるから大きな影響を受けなかったんですよ。サブスクだから月に1回は行きたい、短時間のメニューが多いからコロナ禍でも利用しやすい、また、導入店舗が多いから近所の美容室でも利用できるなど、コロナ禍でも利用しやすい要素がMEZONには詰まっていたのだと思います。

■一人ひとりにあったメニューをレコメンドできるように

ーー店舗型美容サブスクリプションサービス国内No.1となった今、これから新しくチャレンジしたいことはありますか?

石黒さん:FacebookやGoogleは、Web上で収集した個人の情報を持っていますよね。でも、僕らは店舗というオフラインでしか収集できない何万人の髪質・髪型の情報を持っている。まだ構想中ですが、そのオフラインで収集した髪の毛に関するデータをもとに、AIでおすすめのサービスや美容室をレコメンドできるようにしたいと思っています。

ーーそれが実現すると喜ぶ人も多そう!

石黒さん:薬剤やメニューを見ても、どれが自分に合うのかわからないですからね。今って、自分に合う美容室やサービスを探すのに1時間とかそれ以上かけている人もいると思うんです。その状態はお客さんにとって優しくない。だから、「MEZONを使えば1分で自分に最適なサービスと美容室がわかる」というサービスにできると嬉しいですね。

MEZONだからこその美容サービスを今後も展開予定

MEZONだからこその美容サービスを今後も展開予定

ーーMEZONがどうして国内No1のサブスクとなったのか、ヒントが見えました!石黒さん、貴重なお話ありがとうございました。

■STAFF CREDIT

text 仲奈々

illustrator おかもと かほ

EDIT 高木 (subscline)

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