サブスク型オンライン診療「高血圧イーメディカル」成功の秘訣は、徹底したマーケティング思考?

医療
イーメディカルジャパン株式会社 塩谷さん

突然ですが、あなたの会社ではサブスクリプション(以下、サブスク)を取り入れていますか?


最近何かと話題のサブスク。一度決済登録をするとその後は毎月自動的に更新されるため、会社にも、お客様にもメリットがたくさん。しかし、一度は導入を検討してみたものの、「運用が難しい……」と諦めてしまった方もいるかもしれません。

この企画では、サブスクの特徴をうまく活用し事業を成長させている企業にお話を伺い、サブスク活用のヒントを探ります。第三回目となる今回は、高血圧特化型×サブスク型オンライン診療「高血圧イーメディカル」を運営する、イーメディカルジャパン株式会社の塩谷さんにお話を伺います。

💡こんな企業様・個人オーナー様におすすめ

  • サブスクの成功事例を知りたい
  • お客様の生活の一部としてサービスを普及したい
  • サブスク✖️医療のコツを知りたい

■ マーケティングの力で、日本の健康寿命を伸ばしたい

ーーまずは、高血圧イーメディカルについて教えてください。

塩谷さん:はい。高血圧イーメディカルは、高血圧に特化したオンライン診療サービスのサブスクリプションです。月額4,950円(税込)で、初診からのオンライン診療、薬の処方・自宅までの配送、血圧計と専用アプリを使った専門家のモニタリングといったサービスが受けられるんですよ。

高血圧イーメディカル|通院しない便利さと、いつも繋がる安心を。

ーーなぜ高血圧に特化したサービスにしようと考えたのでしょう。

塩谷さん:現在、日本には約4,300万人の高血圧患者がいます。これは、日本の人口の3分の1にあたる数。つまり、日本人の3人に1人は高血圧患者なんです。それくらい、高血圧は私たちにとって身近な病気です。そして同時に、脳血管疾患や心臓疾患を引き起こすリスクの最大要因の1つとなる、命に関わる疾患でもあるんです。

ただ、自覚できる症状がないことが多いから、血圧が高いことを自覚していても病院に行かない人が多いんですね。病院によっては、症状が安定していても薬をもらうためだけに1時間も2時間も待つところもありますから。適切に降圧剤を飲めばリスクを大きく減らせるのに、「めんどくさい」「忙しい」といった理由で、治療を継続しない人が多い。その数は、患者の約半数はいるといわれています。

この課題を解決することは、日本の健康寿命を伸ばすこと、つまり日本社会全体にとってインパクトの大きいことだと思ったんです。私たちイーメディカルジャパンの母体、「刀」はこれまで独自のマーケティング理論で数々の事業を成功させてきたマーケティング集団です。この経験と知識を活かすことで、ただ診察を受けるだけでなく、継続して治療を受けてもらうこと、健康寿命を伸ばす本質的な治療を受けていただく仕組みづくりができるのではないかと考えました。

ーーなるほど。高血圧イーメディカルのホームページを見ると、「よくある質問」が非常に詳しく、丁寧にかかれている印象を受けました。そこも何か意図があるのでしょうか?

塩谷さん:医療のサービスとして、そのサービスの信頼は最も重要なことの1つだからです。分からないことや不安をしっかり解消していただけるように、Webサイトのなかでの明確さを意識しています。

数年前に比べたらオンライン診療が普及してきたとはいえ、利用者はごく一部の限られた方のみです。そのうえ、病気の治療そのものへの不安もある。

高血圧は自覚症状がほとんどないから、病院に通わず食事や運動でなんとかしよう、と考える方も多いんですね。自分自身は大丈夫、と思いたい気持ちも落ち着いて、病院に行かなくて済まされるなら楽だしも無いように思いがちです。高血圧の初期の段階では、生活習慣の改善で適切に対処できる場合もありますが、症状が進行していた場合は、それだけでは、根本的な解決にはなりません。

治療を受けていただくには、私たちのサービスが信頼できるものであること、そしてオンライン診療なら治療が大幅に楽になることを知っていただく必要があります。そのためにも、高血圧イーメディカル登録前の接点となる「よくある質問」をはじめ、Webサイトを作り込むことは意識してやっていますね。

ーーそのほか、患者さんが高血圧イーメディカルに興味を持っていただけるよう工夫されていることはありますか?

**塩谷さん:**専用のアプリやLINEから医師と話せる無料オンライン相談の予約ができるようにして、できるだけ最初に相談するハードルをさげています。

サービスの本格開始から、入会いただく方が増えていますが、その多くは「これまで一度も治療していない方」や「過去に治療をやめてしまった方」です。そして、入会以降に解約するケースが非常に少ないのも、このサービスの特徴です。つまり、このサービスを使うことで、治療を開始できていなかった、継続できていなかった高血圧の患者さんたちが継続して治療を受けてくれるようになったんですよ!

ただ、日本の健康寿命を伸ばすことを考えると、まだまだサービスを届けられていない方もたくさんいます。そのためにも、患者さんとの接点をもっと広げていくことが、サービス拡大の大きなポイントになってくると思います。

ーー月額4,950円という価格はどのように設定されたのでしょうか?病院に通院するよりは、少し高いような気もしますが……。

塩谷さん:そうですね。通院して、対面で診察して薬局でお薬をもらうよりは、少し割高だと思います。ただ、このサービスの本質は、診療する瞬間や薬をもらうことだけではありません。毎月のように発生していた通院をしなくていいことや、診察と診察の間にも家庭での血圧状況を見守られ、不安な時にはチャットで相談できたりすることに大きな価値を感じてくださっている方は多いですね。

また、実装する前に消費者調査などは何度も行って、「いくらまでなら利用したいと思うか」など定量的な検証も重ねていました。

■ 医療業界が協力してくれたから、異業種からの参入のハードルを乗り越えられた

ーーコロナ禍以降、オンライン診療が少しずつ普及してきました。高血圧イーメディカルと同様のサービスは現在どのくらいあるのでしょうか?

塩谷さん:確かにオンライン診療のサービスは増えてきましたが、高血圧に特化してしっかり向き合って専門性をもって診療しているのは私たちのサービスだけです。そういった意味では、現時点でサービスの品質、提供内容ともに明確に競合しているサービスはありません。

ーーそれはどうして?

塩谷さん:高血圧イーメディカルでは、診察にあたる医師は高血圧専門医、そして患者さんに提供している血圧計は世界No.1の家庭血圧機メーカー、オムロンヘルスケア社が協力しているなど、高血圧のスペシャリストたちと提携してサービスを提供しています。

今後、血圧にアプローチしたオンライン診療は登場してくるかもしれません。ただ、私たちと同等のクオリティでサービス設計し、高血圧疾患をお持ちの方に向き合うのは、ハードルが高いと思ういます。

ーーなるほど。イーメディカルジャパンでは、そのどのようにハードルを乗り越えたのでしょうか。

塩谷さん:私たちはもともとマーケティングの会社が母体なので、医療分野に参入すること自体が大きなチャレンジでした。業界が異なる点では、分からないことが多くて大変でしたね。ただ、このサービスを実現させたいのが私たちだけじゃなく、協力してくださる方々も大勢いたから乗り越えられたのだと思います。

ーー私たちだけじゃないとは?

塩谷さん:多くの方が新しいサービスの立ち上げを応援してくれたんですよ。こういう取材を受けると、よく「オンライン診療が広まると通院する人が少なくなるから、反対もあったんじゃないか」と聞かれるのですが、このサービスの大義に対して賛同いただく医療関係者の皆さんが多くいてくださったんです。

そもそも、私たちのやっているオンライン診療は現状治療開始できていない、通院できていない人を医療につなげるためのサービスだから、患者さんの取り合いにはならないと考えています。それに、これまで高血圧疾患に向き合ってこられた医師や医療関係者の皆さんは、私たち以上に高血圧未治療の患者さんが大勢いることに長年課題意識を感じていたんです。オンライン診療が広まれば、長年の課題が解決できるかもしれない。その意義の大きさを感じてくださっているので、異業種からの参入ながら応援してくださる方が増えていったのではないでしょうか。

■ オンライン診療の強みを活かして、事業を成長させていく

ーー現状のサービスは自由診療のサブスクプランのみですよね。今後、保険適用のプランなど、新しいサービスも出していく予定はありますか。

塩谷さん:現在は、薬の種類がある程度増えても、オンライン診療の頻度が多くても少なくても、月額料金が一定でわかりやすい、自由診療の形式をとっています。私たちのサービスには、診療以外の時間をサポートする仕組みも含んでいるので、その意味でもワンパッケージは明確です。 一方で、保険診療への対応も検討を進めていきたいと考えています。

また、サービス開始当初は、toC向けのサービスのみでしたが、会社の福利厚生として法人での導入を検討いただくケースなどtoBの領域も拡大しています。

ーー最近では生活習慣の改善をサポートするアプリも出てきていますが、そういったサービスの検討はありますか。

塩谷さん:現在、高血圧イーメディカルにはオンライン診療プランとモニタリングプランのふたつのプランがあります。

オンライン診療プランは、月額4,950円(税込)で診療とお薬が必要な方向けのプラン。モニタリングプランは、月額1,650円(税込)で血圧の経過観察とチャット相談ができるシンプルなプランです。後者のプランでは特に、生活習慣の改善は大事な要素の1つです。

私たちが注力していきたいのは、やっぱりオンライン診療を通じた日本の健康寿命の延伸。これからも、軸足はそこにおいてサービス改善を進めていければと思っています。

ーー手広く事業を広げていくのではなく、得意分野をさらに伸ばしていくのですね。マーケティングの専門家が立ち上げたサービスならではの、事業の成長のさせ方を覗き見できた気がします。塩谷さん、貴重なお話ありがとうございました!

■STAFF CREDIT

text 仲奈々

illustrator おかもと かほ

EDIT 高木 (subscline)

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